「……驚いた」

「へっ! トーゼンだろっ! あたしの身体と同価値以上のものなんだ。この世に二つとない名品のつもりだぜ? あたしの“コレ”は名器だけどなっ!」

「……そうか」

「けっ! 相変わらずそっちの話にゃ反応薄いな…………男色か?」

「冗談でもやめて。ちゃんと女の子好きだから」

「の割にゃあたしにゃ手もださねぇけどな」

「我慢してるんだよ」

「……ヘタレめ」

「うっさい犯すよ?」

「大歓迎だ。やってもらおうじゃねぇか♪」

「……ごめんなさい」

「…………ちぇっ」

























てれれれってってってー♪

ついに武器を手に入れました、劉封です。

これがもう凄いのなんのって。

注文した人間がいうのもなんですが、ホントに出来るもんなんですねぇ……忍者刀って。

もうこれで気分はすっかり忍者……まぁ、ゲームとかにでてくる忍者っぽいですけどね?

こっちは元々中国の剣が直剣って事もあって片刃にしてもらえば良いだけだったんで、何の問題もありませんでした。

…………嘘です。遊び心でソードブレイカーっぽく溝を作るように頼んでみたらそれが事の他鍛冶屋のお姉さんの探究心に火をつけたらしく、なんか想像以上に物凄いものが仕上がってきました。


「こ……これ以上のものが作れる奴……いるなら出てこいやぁ……」


俺にその想像よりも若干幅広で厚めな忍者刀を渡すと、俺に倒れこむように眠ってしまいました。

とても満足そうな笑顔を満面に浮かべながら。

……え? その鍛冶屋のお姉さんとはどうなったかって?

…………どうにもなっていない、ですはい。

え、ええいっ! 笑わば笑えっ!

確かにあんな極上の身体のおねいさんにあそこまで誘われて何もしなかったんだからヘタレ言われても仕方ないわっ!

でもなんかこう、あそこまで強引に迫られると引いちゃうん……あれ? なんか前もそんな人いましたよね?

……………………………………………………………………いや、気のせいですね。

俺のこれまでの人生にそんな人いなかったです。

二度目ですけど一度目でも今回でもいたはずがないです。

いなかったって……嘘だって言ってくださいよっ!

……うぅ……まさか会う人会う人あんな痴女系統なのだろうか……

とまぁそんな訳で気がついた鍛冶屋のおねいさんに忍者刀のお礼を言って逃げるように、って言うか逃げてきたんですが……


「あっ劉封殿っ!」「っ! 殿ではありませんか」


実家に向かおうかって時に、図ったように重なった声に呼び止められました。

聞き覚えのある元気の良い声と落ち着いた声は……


「周泰ちゃん。思春も」


だったんですが、いきなり呼び止められた俺よりもさらに驚いてるのが、何を隠そう俺に声をかけた二人。


「はぅっ!? かん…思春殿、劉封殿をご存知でしたかっ!?」

「む? そういう明命は何処で 殿…劉封殿を?」


なるほど。

互いに俺と知り合いって事は知らなかったようです。

まぁ確かに、俺が思春と分かれたその日に周泰と出会って、それから……そういえば俺、忍者刀が出来上がるまでの時間ほとんど誰とも出会ってないっ!?

あ、いや、確かに一月弱くらいなんだけど……って一ヶ月弱っ!?

お、俺、そんな長時間無駄に毎日過ごしてたんですか……いや、反省。

実家には帰らなかったんで宿泊費がもったいなかった。

食費は『劉屋』で顔パスだったけど、今後はそういう事のないように……ってそうじゃなかった。


「あ〜……思春は俺の弟子。周泰ちゃんは思春と分かれた日に会って、鍛冶屋を紹介してもらった」

「ほう、そうでしたか」

「はぅっ!? 思春殿は劉封殿の御弟子様でしたか」

「と言っても少々戦闘技術を教えただけなんだけどな」

「しょ、少々などとご謙遜を。明命、この方はな。ご自分が鍛錬と経験を重ねて編み出された戦闘方法を、私が教えを乞うたというだけで惜しげもなく、懇切丁寧にお教えくださったのだ」

「はうぁっ!? な、なんて器の広い……思春殿が羨ましいです」

「だろう」


い、いやそんな羨ましがられても。

思春も、そんなに胸張って自慢するような事じゃないよ?

っていうか別に俺が鍛錬と経験を積み重ねて編み出したんじゃないし。

ん? あ、そうか。


「思春」

「はっ」

「俺の戦闘術の基礎はすべて思春に叩き込んである。だから……もし周泰ちゃんが自分の力だけで行き詰ったら、その時は……分かるね?」

「……はっ!」

「へっ? な、なんですかっ?」

殿は今私に、もしお前が自分の力で高みを目指す事に行き詰った時は、お前が望めば我らが封神流の教えで私がお前の助けになるようお命じになられたのだ」

「命じてないよ。ただ、周泰ちゃんがそれを望んだ時、手助けをするか否かの判断は思春に任せた」

「……承りました」

「あ、ありがとうございますっ!」


よし、これで周泰ちゃんの希望もまぁ叶うし、よく転がれば封神流が増える。

しかもあの周泰ですよ!? 周泰!

自らの身体を盾にして主君を守るあのっ!

…………まぁ、俺の目の前の周泰は、黒髪ロングのちっちゃいコ○助な女の子ですけど。

その後は少し談笑。

周泰ちゃんはやっぱり、とっても元気のいい娘さんです。

たとえるなら……柴の子犬。

嬉しそうにコロコロと表情を変えながら屈託なく接してくれます。

隣の思春はドーベルマンですかね。

話の流れで、二人とも孫家に仕えて日が浅いという話になったので、餞別…って言っていいのかは分からないけどお別れの際のプレゼント代わりとして、おじさんの『劉屋』にとってかえして二人は顔パスで食事を許可してもらってきました。

おじさんからなにやら意味ありげな視線……っていうか露骨に生暖かい視線が送られてきましたが、まぁそこは二人の名誉の為に否定。

一度につき二杯までって事で許可を貰った時の周泰ちゃんの喜びようと思春の恐縮のしようといったら……


“なんだこの可愛い生き物達”


って感じでした。


「じゃあ、そろそろいくか」

「…… 殿、息災を心より願っております」

「お気をつけてっ」


と言うわけで、ホントにここでお別れにしたいと思います。

これ以上長居すると未練が残りそうで…………だって可愛いんですよ、二人共。

最後は一応、師匠らしく締めたいですしね。


「思春、次会う時は敵か味方か分からないが……俺はもう完全に追い抜かれているだろうな。期待してる」

「い、いえ……私はまだまだ未熟。それにいくら力をつけようが貴方の業はそれを無効にする為のものでしょう」

「何を言ってるんだ。思春がこれからつける力は、その技術も踏まえた上での“力”だろう」

「…………はっ! 機会があれば必ずや、ご期待頂いている以上の成長をご覧に入れてみせます」

「わ、私もっ! 私も是非お手合わせお願いしたいですっ」

「……簡単に戦えると思うなよ?」


うわぁ、締まらない。

最後はなんか逃げっぽくなっちゃいましたよ。

思春、めちゃくちゃやる気出してるし、周泰ちゃんまで……怖いしやっぱ孫家に仕えようか?

国は大きくなるし、有名どころも一杯……って目の前の二人もその筆頭か。

でもここに仕えてもぶっちゃけ、俺が出来る事なさそうなんですよ。

思春はもう俺を超える事確定ですし、周泰ちゃんもかなり強そうだし。

頭だってまぁ、前の人生での知識はあるんで働けると思うんですが、それはそれで忍としては不満が残りますからね。

これは持論なんですけど、はじめから大きな会社に勤めて能力がおっつかずに落っこちていくよりも下から這い上がったほうが楽しいと思うんですよ。

要求されるレベルに上っていくよりも、自分で次を設定するほうが性にあってるようなんです。

え? 誰ですか今マイペースなだけだろって言った人?

…………はい、そのとおりですが何か?

はぁ……いきますか。

あ、そうだ。


「この町の、さっきの所とは反対側の『劉屋』が本店なんだ。親父殿と母様がいるから、まぁ自分達で大抵の事はどうにか出来る人達だけど、何かあった時余裕があれば助けてやってくれ」

「はっ。 有事の際は、この命に代えましても」

「私も、微力ながら力にならせていただきます!」

「ありがとう、二人共……じゃあ、またね」

























「あら? 思春と明命じゃない。どうしたの?」

「「雪蓮様っ!?」」


私と明命が 殿をお見送りした直後。

入れ替わるように背後から声をかけてこられたのは、我々の主である孫策殿だった。

というかこのお方はまたお一人で……


「策殿ぉ! ……っはぁ、まったく……あまり老体に鞭を打つような真似はさせんでくれ」


……黄蓋殿とご一緒だったか。


「ごめ〜ん。でもなんか面白そうな事がありそうな気がしたのよ」

「はぁ……どんな感じゃ?」

「う〜ん……なんかこう、いい男のいそうな?」

「聞かれても儂にはわからんぞ」


……相変わらず鋭い。

しかしこれはまぁ、言わんほうが……


「はぅっ!? す、凄いです雪蓮様っ! 大正解ですっ!」


……こ、こいつは……


「へぇ? やっぱり誰かいたんだ」

「はいっ! 思春殿のお師匠様がいらっしゃいました!」

「ほう、師とな? では儂と同じくらいの御仁かの?」

「え〜、おじい…「策殿?」…おじさまなの?」


雪蓮様、貴女言ってはいけないことを……

……祭様……主を脅すのですか、貴女は。


「いえ。雪蓮様より上というくらいの、とっても優しそうで落ち着きのある、懐の深い男性でしたっ!」


そして明命、お前ははしゃぎすぎだ。


「ふ〜ん……いい男?」

「はいっ! 兄上とお呼びしたくなるような方でしたっ!」

「ほう、明命がのぉ……思春、お主はどうなのだ?」


……ちっ。


「どう、とは?」

「そうそう。思春はどう評価するの? 貴女のお師匠さん」


……この方達の前で偽証は通用しないか。


「……尊敬出来るお方です。懐がとてつもなく深く、そして……私の常識の通用しないお方でもあります」

「ほう、常識が通用しないとな?」

「はい。例えばですが、祭様。貴女は乞われたからといって、ご自分が今まで積み上げてきた武やその術を簡単に他人に教えたりしますか?」

「いや、せんな。欲しければ儂との鍛錬で盗め。それしか手に入れる方法はない」

「はい、恐らく今この大陸にいる師と弟子のほとんどはそういう関係性でしょう。しかしあの方は違いました」

「……まさか」

「はい。それこそ手取り足取りと言えるほど懇切丁寧に、一から仕込んでいただきました。ただ力で捻じ伏せるしか能のなかった私に、あの方の技の基本すべてを」

「……道理で、儂が前見たお主とは格段に違っていたわけじゃ。前のお主はただ突撃する猪じゃったからの」


それは、何も言い返す事など出来ない事実。

もし私があの時 殿にお会い出来ていなければ、恐らく古参の宿将である祭殿に鼻で笑われて叩きのめされる新参の将でしかなかっただろう。

しかし私は出会ったのだ。

私に一番足りなかったものを気づかせ、教え、導いてくださった方に。


「確かに、祭との模擬戦は凄い迫力だったわよね」

「はいっ! 祭様の本気が模擬戦で見れるとは思っても見ませんでしたっ!」

「よねぇ〜。 しかも祭、躍起になったせいで負けちゃうし」

「い、いやそれはですな……」


そう。

私は「試験だ」と模擬戦を仕掛けてこられた祭殿に、辛くもとはいえ勝つ事が出来たのだ。

あの時のあの喜びは…………筆舌に尽くしがたい。

武では孫呉随一と謳われる祭殿、もとい黄蓋殿に、鍛錬で得物をこちらにあわせていただいたとはいえ勝てたのだ。

自分主体で攻め、相手を呑んで一撃で決める事はやはり出来なかった。

しかしその後の私には、 殿からの教えがあった。

激しく、重い祭殿の攻撃をかいくぐりながら良く見ていれば、確かに 殿の仰っていたとおりだった。

使い慣れた祭殿の弓、“多幻双弓”であればそうもいかなかったのであろうが、鍛錬用の剣を手にした祭殿にはやはり、ほんのわずかではあったが癖のようなものがあった。

音に聞こえた祭殿の剛撃を凌ぐのは至難の業ではあったが、封神流には相手の攻撃を受け流して自分の攻撃の勢いに変える技術があり、私は曲がりなりにもその師範代の任を仰せつかった身であれば……恥はかけまい。


「あれも師の教えがあってこそです」


私にはこれだけで事足りる。


「はぁ……私の感も鈍ったかしら? もうちょっと早く来れてればその思春の師匠って男、孫家に引き止められたかもしれないのに」

「策殿、それは遠まわしにこの老躯の動きが鈍かった所為で足を引っ張られたと仰っておられるか?」

「っ!? い、いやねぇ祭。そんな事思ってもないわよ」


祭殿、被害妄想が過ぎると思われます。

雪蓮様が怯えるほどの殺気をこんな往来で出さないで頂きたい。


「まぁいいわ。とりあえず当初の目的だった思春は見つけられたんだし」

「……は?」


殿を感で察知してこられたのではなく、当初の目的は私?


「ホントは明命に頼むつもりだったんだけど、明命は冥琳の仕事のほうが忙しくなると頼めなくなっちゃうから困ってたの。祭に頼むのは気が引けたし、思春がこっちの予想以上に力をつけてくれてて助かったわ」

「それを口実に冥琳を無理やり説き伏せて町で遊びまわっとったんじゃがの」

「そ、それは……冥琳には内緒よ。あくまでも私は思春を探しに来たの。じゃないと……」

「わ、わかったわかった。そのようにするから冥琳には……」

「ええ。お互い、胸の内に秘めておきましょ。で、あの話なんだけど」


……何の話だ?

何か仕事を頼まれるようだが……


「祭も、思春なら問題ないと思うわよね?」

「……はっ。忠誠心は短い間ながらこれでもかというほど確認できました。性格の“かたさ”は色々な意味でこれからの改善点やもしれんがあの方も同じような性分じゃし、実力は申し分なし。なにより……儂には勤まらん」


こ、黄公覆殿をもってしても勤まらないような仕事を私に……

それほどまでの仕事なのか?

……受けて立ちましょう雪蓮様。


「……若輩の身、仕えて日の浅いこの身ですが、孫呉の繁栄の為でしたらなんなりとお申し付け下さい」


なんだか分かりませんが皆に私を認めさせるためにもその仕事、こなしてご覧に入れます。


「よしっ! よく言った思春! さすがは鍛錬とはいえ儂を下した者」

「そうね。じゃあ思春…じゃなくて甘興覇に我孫伯符が王として命ずる!」

「はっ!」

「お前はこれより建業へと赴き蓮華…孫仲謀に親衛隊長としての任につけ。他に命なくばそれを最優先として行動せよっ!」

「ははっ! …………は?」


い、今雪蓮様は…………なんと?


「そして周幼平にも同様に親衛隊長を命ずるが、こちらは周瑜からの任務を優先事項とし、実質は甘興覇不在時などの補佐としての働きを期待する」

「ぎょ、御意ですっ!」

「両名とも、我が妹をこれから……よろしく頼むわよ?」

「「御意っ!」」


わ、私が仲謀様……蓮華様の……親衛隊長?

こ、これでは認めていただくと言うより最早……

こんなに……こんなに早くこの方々は私を認めて下さったというのか?

江族上がりの、身分の定かでない私のようなものを。


「…………思春」

「は……はっ!」

「私達孫家の人間はね、一度信じた人間をこちらから疑うような真似はしないわ。特に蓮華はその傾向が如実なの。だから……初対面の数刻で真名を許されていた貴女に、期待するわ」


そう言って、素直になりきれず少し困ったような、懇願するような雪蓮様笑顔を私は生涯忘れないだろう。

殿との出会いは私に武のみでなく、孫家に仕えるものとしての立ち居地まで与えてくださったのだ。

だからこの任務、 殿に恩をお返しする意味も込めて……


「はっ! この甘興覇、身命を賭しまして任にあたらせて頂く所存です!」

























え〜っと、とりあえずちょっと行動が遅れたっていうのはお話しましたよね?

で、色々考えた結果なりあがっていくならとりあえず涼州のほうがいいんじゃないかって思いまして、そっちに向かってみる事にしました。

あの辺りなら今はたしか馬騰が頭になって連合組んでる感じだろうから、どこにいっても最後馬騰の近くまで上っていけたらいいって事でわかりやすいし、馬超とか超有名人はいるけどそれ以外はあんまり目立たない人達ばっかりだから俺でも最初からそこそこはいけると思うんですよ。

ちょっと黄巾の乱まで時間が長くもなく短くもない微妙なところで、のんびり上っていく事が出来ないから、最初から実力次第で使ってくれそうなところ探したくて。

いやぁ、自分が劉備達よりも早く生まれてるって事でちょっと気が緩んでましたね。

でまぁ、あっちを目指すって事で実家に一度顔を出してからいこうかと思ったんですが……


〜〜〜〜っ!!!! っ! っ!!!!」


相変わらずな母様です。

同じ町にいて帰らなかった事に安堵と罪悪感を両方感じるような。


「お食事にする? お風呂? それとも私? 私よねっ!? そうよね私よねっ!?」

「……脱ぎださないでください母様。店の中です」


凝視していた男性客にはとりあえず備え付けの箸を投げておく。

……眼に入ったらごめんなさい。


「これから涼州のほうへ行ってみるつもりなので、その前に挨拶しにきました」

「そんなぁ〜っ!」

「……そうか」

「親父殿、知り合った何人かに世話になったから、反対側の店で2杯まで無料で食事が出来るようにしてもらったけど、問題ある?」

「いや、ない。後で人相を聞いておいて、各支店で同じ対応をするようにしておく。これからもそういった人が増えるようなら定期的に人相書きと一緒に連絡してこい。あまり大人数でなければ問題あるまい」


……そんな簡単に、いいんですか?


「本店の代表は俺になっているが、お前が企画者だという事はここを巣立っていった人間も含めて関係者は全員知っている。『劉屋』に関わるものでお前を知らないのは、地方に流れていった奴等が現地で雇った給仕くらいなものだろう。何せ……」


? 親父殿、話の途中で一体……


「いいですか皆さん。あそこで店主と話をしている凛々しい男子が、私の息子でこの『劉屋』の基盤を作った劉封です。皆さんがそれぞれの町で店を開く際には、劉封の仕事にも一役買ってもらう事は以前お伝えしましたね? 具体的には……」


……母様……


「あの仕事、俺が頼まれていたんだがいつの間にかあいつがやるようになってな」


……まぁ、インパクトとしちゃ俺の事をより強く覚えてもらえるからいい……のか?


「あのおかげでお前の人相はともかく名前は皆知っている。だからそのお前が少々“無料での食事を許した人間がいるから融通をきかせてくれ”と言って来たところで、断る理由はないし……わかるだろう?」


……母様相手に断れるはずもない、ですね。わかりますとも。


「……じゃあ、もういく事にする。どこかに落ち着いたら文でお知らせるから」

「あぁ、いってこい……気を、つけてな」

「あぁ、親父殿も。ここは袁術の支配下だ。離れようと思ったら、期を逃さないでくれよ?」

「一流の猟師には必要ない言葉だ」


でしょうね。


「もしどうしても緊急で力が必要なら、孫家に仕えてる甘寧って子か周泰って子を尋ねてみてくれ。食事の件の子達なんだが、俺の名前を出したら少しくらい力になってくれるかもしれない」

「……まぁ、覚えておこう」


よし、事後承諾完了。

それじゃ……


「母様、いってき…」

「じぃ〜」

「……いってきま……」

「むぅ〜」


……母様、息子に向かって唇突き出すってどんな母親ですか。

……わかった、分かりましたよ。でも……


「ちゅ……いってきます」


頬で納得してください、お願いだから。



























「あっ…い、今ほっぺに…っっっ!? くぅんぁっ!? はぁんんんっっっ!!!!?」


…………お前…………本気か?(by劉安aka親父殿)





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