え、え〜っと、どうも、ポンズです。
ハンター試験の結果は何度もいうとおり不合格でしたが、今一緒にいる人達は皆合格者なので色々勉強しようと思ってます。
思ってますけど……

「ちなみに1の門は片側2トンになってます」

「に、2トンッ!?」

「……………………ん? 1の門という事は…………」

「ええ、7まであるでしょう? 一つ増えるごとに重さが倍になっていくんですよ。力を入れればその力に応じて大きい扉が開く仕組みです」

「ば、倍っ!?」

「ちなみにキルア坊ちゃんが戻ってきた時は3まで開けていかれましたよ」

「3……………………じゅ、16トンッ!? ……………………無理……………………こんなの無理だよ」

私の前には早くも、挫折の影が迫ってきてます。
















特訓×無理無理×試しの門















というわけでキルアのご実家、ククルーマウンテンにやってきました、 です。
結局ゴン、クラピカ、レオリオ、ポンズと僕の五人で来ることになって、観光バスでゆらゆらぁ〜っとやってきました。
結構苦労するかもみたいな空気だったんですが、どうやら観光スポットになってたみたいで。
……自分の家が観光地って、どうなんだろ?

「……で、この試しの門を正面突破しないと犬って名前を借りた巨大生物に食い殺される、と」

「……正確に情報をまとめてくれてありがと、

「…………無理?」

「…………………………………………出来ると思う?」

僕の横では今、ポンズが早くも黒い何かを背負ってます。
まぁ、普通女の子が片方最低2トンの扉を自信満々で押し開ける、なんて事はないよね。

「おじさん鍵貸して。友達に会いに来ただけなのに試されるなんてまっぴらだから、オレは侵入者でいいよ」

なんかゴンがわがまま言って守衛のおじさん困らせてるけど、そっちは任せたクラピカ……とレオリオ。
僕にはポンズをどうにか立ち直らせる事で精一杯。
…………出来るかどうかわからないけど。

「皆に少しでも追いつきたいのに……これじゃいつまでたっても隣に……」

く、暗さが増してきたっ!?
ど、どうしよう!? もう完全に「こんなの出来ない」モードに入ってる!

「そ、そんな事ないってポンズ。努力すれば出来るよ。ただ重い扉を押し開けるだけなんだから」

し、しょうがない。努力次第で出来るって事を証明すれば……

「ほ、ほらっ!」

「………………………………………………………………ふぇ?」

「「「「…………………………………………」」」」

…………あれ? なんで皆固まった?

「………… ……………………無茶苦茶よ、貴方」

…………酷くない?

「な、なんだそりゃ!?」

「ひぇ〜…………5まで開いてるって事は…………」

「…………片側だから、32トン…………ありえん」

「か、片手だけで5の門まで…………君は何者だい?」

……………………い、いや、ただ努力次第で出来るって事を証明したかっただけなんだよ?
でも僕、自分で思ってる以上に力が付いてるらしい。
まぁそうだよね。
あのジンの無茶な大冒険から生還して、ビスケの修行耐え抜いて……………………思い出したら泣きそうになってきた。
けど、あれだけの理不尽に振り回されたんだからコレくらい出来てもおかしくないよね?

「…………昔から色々修行してたからね。皆も努力次第で出来るようになるよ」

「ホントッ!?」

「「「「…………………………………………嘘だ」」」」

ひ、酷いな皆。
信じてくれるのはゴンだけか。
でも結局そのおかげでゴンも侵入者ルートは諦めてくれたみたいで、皆で扉を開けられるようになるまで特訓する事になりました。
…………キキョウさんとゼノさん、いるのかなぁ? 出来れば会いたくないな。ゼノさんはともかく、キキョウさんは怖いし。
さ、それじゃ僕もゼブロさん達の家で修行の手伝いを…………


『お前( )はやらんでいい(やらないで)』

……………………なんか疎外感を感じるなぁ。















ゼブロさんのご好意で、何もかもが重い家で修行させていただいて20日が経ちました。
レオリオは10日で1の門を早々にクリアして、ゴン君はそれとほぼ同時にハンター試験で折られた腕が回復。
そしてそれから本格的に修行を始めたのにもかかわらず……

「いやったぁっ!」

クラピカについでゴン君も、1の門をクリアした。
レオリオはもう2の門も開けられるようになってるし……

「まぁ、体格いいから当然なんだけどね」

隣でそう言って私を慰めるように笑いかけてくれる は完全に規格外。
ここで修行するまでもなく軽々と5の門まで開けちゃったし、本気でやればもっといけるんじゃないかと思う。
そんな中私は一人……

「んんんんん〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

グググッ!

「もうちょっとっ! もうちょっとだよ、ポンズさんっ!」

「あと一息だっ!」

「一気にいっちまえっ!」

「〜〜〜〜〜…………っっはぁっ!」

ズダンッ!

完全に開けられないでいる。
隙間は作れるようになったし、正直いって体を滑り込ませるくらいの隙間は作れたんだけど……

「これまでの成長速度を考えると、そうですね……後数日、といったところでしょうか」

ゼブロさんの言葉が現状をはっきり教えてくれる。
あ〜……やっぱり私、皆と比べると力不足なのかなぁ。
皆早くキルアに会いに行きたいのに、私完全に足手まとい……

「いや正直、薬品とか虫を使った変則的なスタイルのポンズには厳しいと思ってたんだけど」

……………………へ? 今なんて……………………

「すごいよポンズさんっ! 最初はあんなに…………えと、なんて言えばいいんだろ? 普通の人だったのに?」

…………ゴンくん?

「いや、ダメだろそれ。でも確かに、一番非力だったのは確かだよな」

「女性特有の筋肉のしなやかさは持っていたが、筋力も合わさり始めている。すさまじい成長だ」

レオリオ……クラピカも。

「さ、後数日で全員クリアだ。頑張ろうぜ、ポンズ!」

「そうだな。折角だ、私とゴンは2の門に届くかどうか限界まで鍛えてみよう」

「うんっ! やっぱ皆で胸張って入りたいもんね! …………それにレオリオに負けてるのはなんか悔しいし」

み、皆…………ってゴンくん、黒いよ?

「何をそんな落ち込んでるの、ポンズ」

…… ……

「皆でキルアに会いに来たんでしょ? なら皆堂々と入らないと意味がないでしょうが」

「で、でも……私の所為で無駄な時間を……ってあたっ!? な、なんで?」

頭叩かれた。
まぁ軽く、ポコンて感じだったけど。

「そんな事言ったらそもそも、レオリオだけなら10日で先に進めてたよ。クラピカとゴンが開けられるようになるまで粘ったプラス10日は無駄? 二人の所為で余計な時間をって、レオリオが思うと思った?」

「んなワケねぇだろうが。皆長所と短所があるんだ。俺は筋力が皆より上だっただけの話だろ」

「そして筋力においてはポンズが一番低いという事は、始めから分かっている。それを分かった上で“全員で”と言っているのだよ、私達は」

「そうだよ。オレだって、最初は早くキルアに会いたかったけどさ。でもここキルアん家なんだし、突然いなくなっちゃうなんて事あるわけないもんね。なら“早く”よりも“皆で”のほうがいいに決まってるじゃない」

「み、皆……ありがと」

やば……皆優しすぎだよ……
ちょっと……泣きそう……

「さぁ、それじゃあ後数日、頑張っていこうか」

「「「おーっ!!!!」」」

……ありがと、本当に。















「ん〜……ところで ?」

「なに? ゴン」

「ポンズの帽子って、気持ちいいの?」

「…………何故?」

「何故って……ずっと手、置いてるから」

「……き、気づいてなかったのか?」

「てっきりずっと慰めているのかと思っていた」

「…………あ」

「……………………ふえぇっ!?」

「おーおー見せ付けてくれるぜオイ。大体よぉ 。さっきの話、お前だけは言っちゃいけないんじゃないか?」

「……何故に?」

「「「…………最初から5まで開けて見せたくせに」」」

「…………ゴメンナサイ」

「あ、わ、私は嬉しかったよ!?」

「…………なんでもいいが君達、少しでも早くキルア坊ちゃんに会いに行くんじゃなかったのかね?」















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