ど〜も〜。早々と合格第一号になった
です。
ネテロじぃの事だから正直ヒソカあたりと戦うことも覚悟してたんだけど、どうやらさすがのネテロじぃもハンター試験の最終試験で殺し合いを繰り広げさせるつもりはなかったみたい。
というわけで双方完全に無傷で試合を終えて、ネテロじぃの思惑どおり(たぶんね)双方無傷で僕はこの逆トーナメントから名前を消すことに成功したんですが……
「……兄……貴!!」
「や」
どうやらこのまま万々歳ってわけにはいかないみたいです。
失格×合格×次なる目的
これが……ハンター試験。
私は改めて、プロハンターになるって事がどれだけの事なのかを理解した。
最終試験が逆トーナメントだって分かった時、私は自分の予想が外れてなくて嬉しかった。
が一番最初の試合であの……なんだっけ? ポ……ポッキー? じゃなくてポ…ポ……ポッカ?
……ま、まぁいいや。
とにかく一番最初の試合でその相手を軽くあしらってみせて合格した時はなんかもう自分の事みたいに嬉しかった。
でも……
「命よりも意地が大切だってのかっ!!
そんな事でくたばって本当に満足かっ!?」
「……親父に会いに行くんだ。もしオレがここであきらめたら、一生会えない気がする。……だから退かない」
次の試合のハンゾー対ゴンくん。
ハンゾーの力は圧倒的で、ゴンくんじゃどうあがいても勝てないって皆分かる様な試合だった。
簡単に組み伏せられてギブアップを迫られて、挙句に左腕を折られて……
それでもゴンくんは退かなかった。
結局この試合はハンゾーが退いて、ゴンくんの勝ち。
最後どうしても勝負したいって駄々捏ねたゴンくんがハンゾーに殴り飛ばされるアクシデントがあったけど、あれは私も自業自得だと思う。
でも結局の所、お父さんに会いに行くために退けないっていうゴンくんの気持ちの強さがハンゾーを退かせたのかもしれない。
ハンゾーも最後にチラッと、ゴンくんの事を気に入ったから、みたいな事言ってたし。
でも本当に大切なのはそんな結果じゃなくて……
「皆、譲れない何かを持ってるんだ」
私が実感したのはそこ。
一次試験の時から
達のハンターを目指す理由を聞いてきたけど、皆、なんて言うか凄く……崇高な感じがしてた。
私のように仕事にっていう人だっているんだろうけど、でもそれだけじゃない人達が回りにたくさんいる。
私も次に受験する時にはゴンくんみたいに、相手が自分の力量を上回っていても挫けないそんな何かが必要なのかもしれない。
「……見つかると……いいな」
でも実は私、この時すでに目標を決めてたんだ。
“
の隣に立つ”
本当に途方もなく大変な事だろうと思うし、もしかしたら死ぬまで叶わないかも知れない。
そもそも
本人がそれを快く思ってくれるかどうかも分からないし、邪魔だと思われたりするかも知れないと思うと、ちょっと怖くなったりもする。
は優しいからそう思っても言わないだろうけど、でも……本当は泣きそうなくらいそれが怖い。
でも……それでも私は、もう決めた。
最初会った時に“敵わない”って決めつけてしまっていた
の背中を追いかけていく事を。
それが多分、これからの私に必要な事だと思うから。
「だから……追いかけるくらいは、許してください」
ゴンくんやクラピカ、レオリオ、キルア……そして、
。
私が友達だと思っている人達で、大切な仲間だと思ってる皆に、私を認めてもらうために。
ハンター試験は結局、殆どの受験者にとって後味のあまり良いものではないまま終った。
かくいう私も、ヒソカとの戦闘は傍目から見てすっきりとするものではなかったことくらい充分に自覚している。
だからこそ、合格者にたいする説明会の際ポックルにその点を指摘され、柄にもなく感情的になってしまったわけだが……
「しかしまぁ、ゴンの言うとおりだな」
自分の合格が決して納得のいく形でなかったのならば、納得がいくまで精進する。
幻影旅団に対する復讐や仲間の目の弔いの他にもう一つ、最優先事項が増えてしまったわけだが、私自身なぜだかそれが喜ばしく感じていた。
それよりも何よりも今優先すべきなのは……
「ククルーマウンテンか。聞いた事ねーな」
キルアにもう一度会う事。
最終試験の際結局、兄という人物と顔を合わせて以来様子のおかしかったキルアは戦闘中だったレオリオの相手、ポドロを殺害してしまい不合格となってしまった。
しかしそのキルアの様子は明らかに不自然。
まるで何か洗脳でもされていたかのようだったその姿に疑問を抱いた私達は、キルアに会いにいく事にした。
メンバーは私、ゴン、レオリオに
の合格組と……
「私も聞いた事ないわ。
は?」
レオリオにプレートを譲って不合格となった彼女、ポンズ。
彼女は今後
について来年のハンター試験に備えるらしく、今回も一緒に来ると主張した。
そして、言ってみれば師匠役になった
なのだが……
「知ってるよ。っていうか僕、キルアのおじいさんとお母さんに会った事あるし」
「「「「…………はい?」」」」
知っている?
あの有名な暗殺一家であるゾルディック家の場所を……しかもそこの二人を知っている?
「キルアには前にもう話してあったんだけどね。実は昔仕事でかち合った事があってその時に」
ちょっ!?
ちょっとまて!? あのゾルディック家と仕事でかち合うって事はつまり!?
「おまっ!?
世界一危険な暗殺一家と仕事でとはいえやりあったってのかっ!?」
「あー……うん。まぁ勝負つく前に依頼人を殺されちゃったから仕事は失敗で、だから助かったってのもあるんだけどね」
「へー。凄いね
っ!」
「でも確かに、
ならゾルディック相手でも大丈夫そうよね」
いやゴンッ!? それにポンズもっ!
そこはそんなに簡単に納得していいところではないぞ!?
「まぁそれはまたいずれ話すとして、キルアの実家だけど……」
そういいながら今度は肩からかけていた鞄を漁りだす
。
そして手帳らしきものを引っ張り出すと、
「あ、あったあった」
と、中から一枚の小さなカードを取り出した。
それは……
「……これは……」
「……もしかしなくてもそうだよな?」
「……本物なのかしら?」
「……?
名刺?」
そう。名刺だった。
名前のところにはゼノ・ゾルディックと書かれており、裏には“特別待遇じゃ”と達筆な手書きで書かれていた。
……特別待遇というとやはり……
「殺したい奴がいれば初回はタダで、次からは半額で請け負ってくれるって」
やはりか。
「……怖ぇな、おい」
「半額っていくらなんだろうね?」
「ゴンくん、ツッコむところが違うよ」
まったくだ。
まぁ何はともあれ、これで後はこの住所にたどり着く方法だけ探せばいいだけか。
おそらくこのメンバーで動くのもこれがひとまず最後になるだろうからな。
これが終ったら私は、雇い主を探さなければならない。
そう……
『9月1日、ヨークシンシティで待ってる◆』
ヒソカのこの言葉を信じるならば奴等、幻影旅団はこの日にそこに集まるはず。
だからそれまでに私は……
そして、だからせめてそれまでは私は……
「……うん……うん、無事合格したよ。これから試験で知り合った友達に会って、それからまたどうするか連絡する。ん?…………う〜ん、そうだなぁ。まだちょっとわかんない。なんか友達って楽しくて…………分かってるよ。シルフィーの事忘れるわけないでしょ?
どんだけ一緒にいたと思ってるの?」
試験が終わり、キルアの実家のあるククルーマウンテンに行く事になって飛行船の予約をしてから暫く。
時間が空いたからシルフィーに合格の報告の電話を入れてみたんだけど……
「…………うん、分かってる。なるべく早く一度顔見せるから……え?
なにそれ?
そんな数日で変わるわけないでしょ?」
なんかシルフィー、やけに子供っぽく絡んでくる。
まぁ長年パートナーみたいな師弟関係続けてきたし、急に家から今までいたはずの人間が居なくなると虚無感みたいなの感じて戸惑うらしいからこれも別に病気とか変とかじゃないけど、それにしても……
「
、もうすぐ飛行船が到着するってよ?」
あ、ポンズ?
もうそんな時間……って僕、シルフィーとどんだけ喋ってたんだ?
「じゃあもうそろそろ行かないといけないから。なんかあったらケータイにかけてね?
あ、あともしかしたら買い換えるかもしれないから出来ればシルフィーは変えないでおいてくれるかこまめにホームコード確認して?
それじゃあ、また電話する」
……なんか最後電話越しに女がどうとか言ってたような気がするけど……気のせいだよね?
僕でも底冷えしそうなほど冷たい声だったような気がしてならないんだけど……
「……気のせいだ。そういう事にしとこう…………うん」
「?
どうしたの
? なんかちょっと顔色悪いみたいだけど……」
「あ〜……いや、大丈夫。なんでもないよ」
「……そう? それじゃ早くいきましょう?
ゴンくんがもう乗りたくてウズウズしてるみたいで、クラピカとレオリオが他人のフリしはじめちゃったのよ」
…………どんだけはしゃいでんだろ?
ゴン。
「で……あ、あの……ホントにいいの?」
ん?
なんだろ突然……ってあぁ、その件か。
“今回の試験で私、基礎から鍛えなおさないといけないって身に染みたの”
そういった切り出しでポンズから相談されたのは、ゴン達がキルアの実家へ行く方法を検索してる間。
一次試験を走りきったからスタミナは基準値をとりあえずクリアしてるとはいえ、やはり戦闘能力などはまわりの受験者達に比べて劣ってるって感じてたみたい。
今まではポンズ自身のスタイルには必要ないと思ってたみたいなんだけど、でもまぁ基礎は大切だよね?
……僕もどんだけビスケ達に叩き込まれたか。
「いいのもなにも……困ってるんでしょ?
なら僕に出来る事があるなら協力する。当然でしょ?」
ってわけで、一緒に修行させてほしいって言われた僕は、もちろんOKした。
一番最初に友達になってくれた娘にそれくらい出来ないで何が友達だよ。
それに……
「う、うん……ありがと」
なんでだろ?
助けてあげたいんだよなぁ……ホント、なんでだろ?
……まぁいいか。
僕がそうしたくて、ポンズがそれを望んでくれてるんだから問題ないよね。
「よしっ。それじゃあいこうか、ポンズ」
ってことで早くクラピカとレオリオんトコいってあげよう。
いい加減他人のフリも限界だろうしね。
「ええ……いきましょ♪」
ってちょっとポンズ!?
腕っ!?
ってかなんか柔らかいよっ!?
「いいでしょ、これくらい。これからよろしくお願いします、師匠♪」
「……シルフィーの事忘れるわけないでしょ?
どんだけ一緒にいたと思ってるの?」
随分久しぶりに、彼の声を聞いた気がします。
はきちんと合格して、約束どおり連絡をくれました。
私は……実は、ネテロお爺様からもうご連絡を受けていたのですが、それでもやはり本人から聞けると嬉しいです。
電話越しでの暫くぶりの姉と弟のような、兄と妹のような、そんな会話が嬉しい。
やはり
は私にとって、最早家族のようなものなのだと実感しました。
ですが……
「
、もうすぐ飛行船が到着するってよ?」
聞こえてきたのは、若い女性の声でした。
とても可愛らしい、それでいてただ可愛いだけではないと分かる、何処か知性を感じる声。
その声を聞いた瞬間私、急激に頭が冷えていくのを感じました。
「……誰です?
今の声の女性は?」
気がつくと私、自分でも驚くほど冷たい声を発していました。
まるで起こっているときの
のような……
幸い私の声は殆ど
の声と被ってしまっていて聞こえていなかったようですが、今の声をもし聞かれていたらと思うと……
な、なんなのでしょう?
このモヤモヤとした暗い感情は。
「……まぁ……誰に聞くまでもないですけれど……」
これは多分、嫉妬。
私は、
を誰かに取られてしまうことを恐れて嫉妬しているのでしょう。
今、彼の姿を間近で見られる場所にいらっしゃる、名前も知らないその女性に。
「……いい加減、自重しなければなりませんね」
いつまでも彼をここに留めておくわけにはいかないのですから。
彼にとって私は師匠であり、長年の相棒。そして姉であり、妹でもある家族。
少し複雑ではありますが、私と彼はもう恋愛感情などを超越してしまっていると思えばそれはそれで……
しかしそれならばそれで……
「きちんと見極めなければなりませんよね?
の家族になりうる存在という事は、私にとっても家族になりうるという事なのですから♪」
……あらいやだ。私ったらまたこんな冷たい声を♪