さて、料理の試験も終って次の試験会場まで飛行船で移動中の僕達ですが……

「残った諸君にはあらためて挨拶しとこうかの。わしが今回のハンター試験審査委員会代表責任者のネテロである」

なんかネテロのじいさんがそのままついてきてます。
いや、まぁ別に嫌って訳じゃないよ?
まぁ、しつこくハンター試験受けろって言って来た事とか、そもそも最初僕を女の子扱いした〜とか、不満がないわけじゃないけど……なんか思い出したらちょっと殺意がわいてきたかも♪

「……では、こちらから連絡するまで各自、自由に時間をお使いください」

ちっちゃい人(マーメンさんだって)の言葉で、皆それぞれ自由に行動し始めた。
ゴンとキルアは探検だって。子供は元気だ♪
クラピカとレオリオはさっさと寝ちゃうらしい。まぁ、色々あったしね。
で……

「なんで僕は捕まってるんでしょうか? ネテロじぃ」

「そんなもん、メンチくんに聞いてくれ。わしゃ知らんよ」

「……あんたここで一番偉いんじゃないの? あ〜、ポンズ? 助けてくれないかな?」

「ひ、人には出来る事と出来ない事があると思うの」

「……ごもっともで」

「さぁいくわよ ! アンタには色々はいてもらわなきゃいけないんだからっ!」

というわけで僕は、試験前だというのに全く緊張感なくメンチさん、ブハラさん、それにサトツさんにドナドナされるのでした。
あぁ、なんとなくポンズが涙目で見てくれてるのが嬉しく感じる。
戻れたらまた一緒に遊ぼうねぇ〜ポンズ。
……ところで、ドナドナって何?










質問×詰問×メンチ悶々!?










「……とまぁ、こういう経緯で僕はネテロじぃと知り合いなんですが……ってあれ? どうしました?」

メンチさん達試験官の皆さんにお茶に誘われて、ネテロじぃとの関係を聞かれました。
ポンズ達に聞かせた僕の経緯を試験官の皆さんに話して聞かせてみたんだけど……

「つ、美人局、ですか……」

「はぁ……」

「……どきどきっ」

まぁ大体同じようなリアクションされましたとさ。
ってかブハラさん。貴方は話よりも食事のほうに興味がいってますよね? 絶対。

「言っときますけど僕、基本的に直前で逃げてたんで、まだ綺麗な身体のままですよ?」

「き、基本的に、ですか?」

「ってことは例外があったのよねっ? どきどきっ♪」

……いや、サトツさんさぁ……なんでそう言葉尻に反応するんですか?
……メンチさんも……貴方ポンズ以上にタチ悪いです。
そんなに僕に誰かと“そういった”関係になっててほしいんですか?

「はぁ……例外っていうのは、逃げ切れなかったり見つかったりしてぶちのめした人達です」

「……え〜」

「……いや、何がそんなに不満? そんなに僕がカマ掘られてると嬉しいんですか?」

ちょっとイラっときたので直接的な表現をしてみる僕。

「いや、掘っててもそれなりに」

一枚上手だったよ、メンチさん。

「でもやっぱ掘られてるほうが好みだなぁ♪ 誘い受けならサイコー! ご飯5杯は軽いわねっ♪」

……誘い受けって何? って聞けない僕。
何故かって? ……意味知ってるから。実際それを演じて“客”とってたから……

「……すみません。なんか疲れたんで休みます」

「え〜っ!? いいじゃんいいじゃん! もっと話聞かせてよ〜!」

「何を駄々捏ねているんです、メンチさん。…… さんも、すみませんね。お呼びだてしておいてその……嫌な事を聞いてしまって」

ああ、なんか優しさが身に染みる。
さすがサトツさん。人間が出来てるなぁ。紳士髭は伊達じゃないんだ。
とは言え、まだなんか駄々捏ねてるメンチさんには……一矢報いたいなぁ。
サトツさんに目配せすると……目を伏せた。
それは“ご自由に”ととっていいんですね? よしっ!

「それじゃあ、僕もちょっと寝てきますね。あと、メンチさん」

「んあ?」

「僕、生きるためにそういう事してただけです。幸か不幸かそういった外見に恵まれたんで」

「……あ……ご、ごめっ……あ、あたし……」

あ……しまった。
ちょっと自虐ネタで反省してもらおうと思っただけなのに、メンチさん思った以上に優しい人だった!?
ど、どうしよ? え、え〜っとぉ……よ、よしっ! やりたくないけどあれでいこうっ。
あとはサトツさんがフォローしてくれる事を祈って……

「……でも、ね。貴方にだったら本当に買われても……いいかなって、思います」

「……んなっ!?」

「……ほう」

「それじゃ。お茶、ありがとうございました」

これぞ秘儀、“その気がない人を引っ掛ける話術!”プラス“僕の素性を知ってる人を引っ掛ける話術!”。
前に同じような話題でシルフィが元気なくしちゃった時に使ったら上手く誤魔化せたんだけど……
上手くいってればいいなぁ。メンチさん嫌いじゃないし、今度もしあった時気まずい顔とかされたら嫌だし……










「メンチさん。しっかりしてください、メンチさん」

「…………………………あ………… は?」

「お休みになるそうですよ。まったく、はしゃぎすぎです」

「……ごめんなさい」

「謝る相手が違うでしょうに」

呆れたようなサトツさんの顔を見ながら、あたしは段々思い出す。
が昔、ショタ男相手の美人局して生活してたって事。
それにちょっと興奮して、はしゃぎすぎちゃった事。
で…… を……傷つけちゃった事。

「やっちゃったぁ……はしゃぎすぎたなぁ。 、怒ってるだろうなあ」

「……はい?」

「え? だってあたし、はしゃぎすぎちゃって…… だってやりたくてやってたわけじゃないだろうに……」

あたしがそう言うと、サトツさんは一瞬きょとんとした顔をして……

「ふっ……貴方もまだまだですね」

可笑しそうに笑い出した。
って、え? な、なんで!?

「彼の最後の言葉の時の表情、見ていなかったのですか?」

最後の言葉……っっっ!?

「いや、言葉そのものじゃありませんよ?」

……あ〜……どうしよ……あたし今絶対顔真赤だ。
だ、だって彼……あんな事いうから……

「まったく……最後彼、貴方に散々からかわれたから一矢報いようとしたんでしょうね。私にやってもいいか確認してきました。ん? いや、フォローを頼んできたのかも知れません」

…………はい?

「しかし見事に引っかかったようですね? でも、彼を“買う”のは、今の貴方にはあまりオススメ出来ませんよ?」

「んなっ!? なっなななな何をっ!?」

「恋人はお金では買えませんからねぇ」

「ちょっ!? さ、サトツさんっ!?」

「それでは、私はこれで」

サトツさんは言いたい事言ってでていっちゃった。
ってか何よっ!? いっいつあたしが の恋人なんかになりたいって……っ!? あーっもうっ! アイツが最後に変なこと言うからっ!

“貴方にだったら本当に買われても……いいかなって、思います”

……へ、変に意識しちゃうじゃないっ!
くぅぅぅぅぅぅっ!

「あっアンタいつまで食べてんのよっ!?」

「ぶほっ!?」

とりあえず、ひたすら喰い続けてるブハラに八つ当たり。
あ〜でも……いくらだろ? 買うのって……
なんかこう……お金で繋がった関係ってのも大人な感じよねぇ……

「ってちっがぁ〜うっ!!!!」

「な、なんなんだよメンチ……」

結局あたしは の一言の所為で丸一日、そんな事ばっかり頭過ぎってたわ。
美食ハンターのあたしが食べ物以外の事でこんなに頭一杯になったのなんて……どんくらいぶりかしらって感じよ。まったく。

「覚えてなさいよ、












「ん? ん〜っ……。ふぁぁ……よく寝た」

次の日の朝。予定よりちょっと遅れて飛行船は目的地に到着した、みたい。
馬鹿高い塔のてっぺんに。

「まったく、相変わらずじゃな」

「ん〜? あ〜、ネテロじぃか。ちょっと到着遅かったんじゃない?」

「ふぉっふぉっ。ちょっと面白い奴等と遊んどってな。休ませてやろうと思ったんじゃ」

面白い奴等……ゴンとキルア、かな?
まぁネテロじぃなら大概の奴は“遊ぶ”になるだろうから確信はないけど……

「ほれ、さっさといかんか」

「はいはい」

「お、そうじゃ 。お師匠から伝言じゃぞ?」

「なに?」

「“落ちたら何でも言う事聞いてもらう”じゃと」

「……了解」

シルフィ……素直じゃない応援の仕方だなぁ……
んっ! でももう是が非でも受かんなきゃ! シルフィも応援してくれてんだし。
でもシルフィも、何かして欲しいんだったら言ってくれればいいのに……
よしっ! ちょっと気合入った! 帰ったら我侭聞いたげよっと。

「んじゃね、ネテロじぃ」

で、飛行船を降りたらまたマーメンさんが説明してた。
ふみゅ……72時間以内に下に降りろって事か。
でも……

「壁を降りるとヘンな鳥に食べられる、か」

まぁアレくらいならどうにでもなるけど……でもやっぱここはちゃんと降りたほうが良さそうだね。
もしかして一緒になった人と友達になれるかも知れないし。
あ、入り口一つ発見。
っと思ったらもう一人同じ所に……って。

「あ、 !」

ポンズだ。
飛行船の中じゃ会わなかったなぁ。
ま、正確には僕が拉致されちゃってからなんだけど。

「ポンズ。おはよ」

「お、おはよう……ってそうじゃなくて!」

ん? 朝からテンション高いなぁポンズ。
物静かに見えて結構活発なんだよねぇ。

「一緒に行ければって思ったんだけど……」

「うん。でも……隠し扉っぽい床は一箇所一人までみたい」

何人かもう中に入ってるけど、同じ所からは入れないみたいだし。
あ、あの人まだ床蹴ってるよ。諦めて他探せばいいのに。

「……よねぇ。残念」

残念、かぁ。
なんか……嬉しいな。

「ポンズ、ここは譲るから……頑張って」

「え? いいの? ありがと〜♪」

「うん。それじゃ」

最後に一度手を振って、ポンズは隠し扉の床の中に入ってった。
よしっ! それじゃあ僕も別のトコ探そっと。
って、ん?

「あ、 〜♪」

「よっ!」

「ゴン、キルア。飛行船の探検は面白かった?」

「それがさぁ。ネテロさんとボールの取り合いする事になっちゃって」

「あのジジイ、足は鉄骨並みに硬いしさぁ。俺は途中でギブした」

「強いでしょ、ネテロじぃ。僕も苦労したよぉ」

へぇ。アレやったのかぁ。
僕もジンに連れられていった時何度かやったんだよねぇ。

「えっ!? もやった事あんのっ!?」

「ってか勝ったの!?」

「あ……うん。まぁ」

アレは……一応勝ち、だよね?

「「どうやって!?」」

そ、そんなキラキラした目で見ないでぇ……

「ま、まぁ……あの頃の僕にしか出来ない方法で油断させて……」

「すっごーいっ!」

「へぇ〜」

い、言えない。まさか……

まさか、“色仕掛け”なんて……

ってか僕もまさかあんな手にネテロじぃが引っかかるとは思わなかったし。
……そういえばあの後、一時期ネテロじぃが僕を見る目が変だったんだよなぁ……
……今度その辺じっくり聞いとこうか。

「そ、それよりも二人は隠し扉見つけた?」

ここは話を逸らそうか。

「あ、うん。とりあえず向こうに四つあったからレオリオとクラピカに声かけようと思ったんだけど」

の分も探してるんだけどな」

お〜……子供達よ、ありがとう♪ でも……

「あ、いいよ僕は。ここに一つあるから」

実は今さっきここに一つ見つけたんだよね。

「また下で会おうね、ゴン、キルア」

「うんっ。 も頑張ってね〜」

「んじゃね、

二人とも手を振って分かれる。
レオリオとクラピカと合流して、今度は全員でこっちに軽く手を振ってくれたのを見てから隠し扉を踏み抜いた僕を待ってたのは……

「案外早かったわね……ん? あら、貴方なの?」

ライフル担いだサングラスの美人さんでした。






















「あ〜あ。5人じゃなきゃ進めないんだったら近くにもう一つ入り口探しとくんだった〜」

「そうだな。そうすれば5人目が になる確率は高かったのに」

「そうか……それは惜しい事をしたな」

「だな。どうせなら気の合う奴と一緒の方がいいし……ん?」

ガコンッ……ドサッ!

「「「「…………………………………………」」」」

「ふぃ〜…………ん? どしたお前ら?」

「「クラピカ、レオリオ……なんか、ゴメン」」

「よりにもよって……」

「……ついてねぇ〜」





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