さってと、とりあえずザバン市に到着。
ちなみに今の僕の格好は大きめの白いT−シャツに濃紺のポケット一杯カーゴパンツ。上には同じ色のダウンベストを羽織ってます。完全に収納力重視な格好だけど、結構気に入ってるからいいっしょ?
ここからなんか食堂を探さなきゃいけないらしいんだけど……

「素直に森の案内人コースで来れば良かったかなぁ」

どうしよう?








到着×出逢って×お友達










どーしよっかなぁ。
というか本当は何処かは分かってるんだけどさ。
どうすればいいかも分かってるんだけどさ。

このまま入っても試験開始まで何やっていいのか検討もつかない!

森から来たら時間つぶし出来たんだろうけど……でもちょっとめんどくさかったし。
ああ、わがままだなぁ僕。でも念使うなって言われちゃったら時間余っててもとかの持久訓練も出来ないし。
よしっ! 街をもう一周して暇つぶしの道具探して、そしたら入ろっと。










んでまぁ街一周してきました。
トランプ、知恵の輪、ナンプレ、筆記用具一式、それにお菓子類と飲み物類。
何があって何がないかも分からないからとりあえず用意してみました。

ってゆーかね、街の食堂って感じの建物ってのはまだいいとしてだよ? 店の名前が『ごはん』ってどーなんだろう? なんか興味本位で入っちゃいそうではあるけど……ま、いいか。はいろ。

………………

………………

………………あの」

………………へ?」

女の子発見。
多分僕より少し年下くらい、ってそうじゃなくて。

「はいるのかな? ならお先にどうぞ?」

立ち止まられちゃ入れないしさ。
僕の言葉にはっと気がついて謝りながら慌ててドアを押した女の子。
中華鍋振ってるおじさんが威勢よく声をあげて出迎えてくれる。
あ、ドア開けて待っててくれてる。うん、いい娘みたいだ。
だから僕は本気で驚いた。まさか、


「「ステーキ定食。弱火でじっくりでお願いします」」

「「………………………………え?」」

まさかこの娘もハンター志望だったなんて。
















ツバシ町の2−5−10。たしかにここよね。
私は目を閉じて深呼吸を一つ。
大丈夫。私は出来る。ハンターになれる。
帽子の中の蜂達も応援してくれてる。

……よし」

そしてドアを押そうとした所で、

「あの?」

声をかけられた。
思わず素っ頓狂な声をあげて声の元を辿ると、そこにはきょとんとした顔のお兄さん。多分歳は同じくらいかちょっと上。髪が長めだしちょっと中性的だけど、でも優しそうなお兄さんって感じね。

「はいるのかな? ならお先にどうぞ?」

そう言われて私はようやくこの人も中に入ろうとしているということに気がついて、

「ご、ごめんなさい」

と謝りながら急いで中に入ってドアを開けっぱなしにして彼が中に入るのを待った。迷惑かけたし、ハンターたるもの礼儀は弁えないと。
入ってきたのを確認した私は厨房に立っているおじさんに向かってここで言うべきキーワードを告げた。
何故かいっしょに入ってきたお兄さんとハモって。









「貴方もハンター志望なの」

一緒に食事しているのに会話がないのは少し気まずいので私から話題を振ってみた。
すると私の向かいで優雅にナイフとフォークを操っていたお兄さんは小さく微笑みながら、

「ええ。 っていいます。 でいいですよ」

と名乗ってきた。声の感じといい、何か癒される感じがする。

「私はポンズ。17歳よ」

「僕は今年で21になります。しかし17ですか。お若いのに立派ですね」

あ、なんか褒められてる感じがする。今までこういった場合大体は皮肉が多かったんだけど、この人そんなの全然ない。素直にそう思ってくれてるって分かる。

さんて変わってるわね。ここから先は敵同士よ?」

褒めてくれた人に言うことではないけど、でも緊張感もって臨まないと。ここから先はハンター試験。特に私みたいな新人の合格率は三年に一人。半端な覚悟じゃふるい落とされる。
そう思って緩みかけた表情を引き締めたんだけど、 さんはきょとんとまた首をかしげ、

「なんでもう敵同士なのかな?」

と心底分からないといった表情をしていた。

さんも新人よね? 合格率は三年に一人だそうよ。という事はもし今年が新人が合格できる年だと仮定しても私達の中で一つの枠を争ってることになるわ。そういうことよ」

「? なにいってるの? 三年に一人ってあくまで統計でしょ? 実際どうなのかなんてわかりっこないよね? それにたとえそうだとしてもその振るいにかけられるまで行き着かないといけない。多くのベテラン達を押しのけてね。ならそれまではむしろ協力したほうが可能性も上がる。よって敵同士とこの時点でみなしてしまうのはデメリットのほうが大きい」

スラスラと論じている さん。ものすごい頭の回転の速さよね。それに全部的を得てる。

「どうかな? 僕の言ってる事で何処か間違ってるところ、ある?」

ゆるゆると首を横に振る私。
私もどっちかって言うと頭脳労働専門なタイプだけど、まさか諭されるとは思ってもみなかったわ。

「それにね、実を言うと僕、友達になれそうな人を探しに来たんだ。ライセンスは二の次。だからもしもそういった選択肢に行き当たったら、その時は僕の友達でいてね?」

それからエレベーターが止まるまで、私は さんと終始和やかに過ごした。
多分私、戦闘だとか試験だとかの前に器とかそういったレベルでもうこの人には敵わないもん。


















エレベーターが下につくまでに友達を一人GETしました。たぶん。
ポンズって女の子なんだけど、すっごくいい娘。ちょっと冷たい雰囲気出したりしてるけど。
さっきちらっとハンター志望動機嘘ついちゃったけど、後で機会があったら本当のこと話そ。





マーメンってちっちゃい人に番号札貰って(僕247番、ポンズが246番。レディーファーストだね)、その後は時間までずっと待機らしい。んでやることなくてその辺の壁際に座り込んでナンプレ始めたんだけど……

……終わったよ」

「ホントに?! あ〜また負けた〜。よっし! 次は負けないわよ!」

いつの間にかかなりフレンドリーに話しかけてくれるようになったポンズとスピード勝負になりました。
ちなみに今の所僕全勝。

さんって今まで何やってた人なの?」

もう何枚目になるかわからない問題を解きながら顔を上げずにそんな事を聞いてきたポンズ。
う〜ん、答えてもいいのかなぁ? …………念の事さえ教えなければ大丈夫かな?

「ハンターの人と組んで仕事してた。簡単な警備とか警護とかそういうの」

「へぇ。じゃあハンターがどんなものかって言うのも分かってるのね」

ええもうそれはそれは。極楽トンボに世界中飛び回ってる割に何かと連絡だけは取ってきて僕にハンターになるように進めてくる人とか、ここの会長なのに試験情報とか流してまで僕をハンターにしようとしたちょっと耄碌気味のじいさんとか……ってあれ?

……考えてみれば僕、いつも組んでた人以外のハンターって二人しか知らないなぁ」

…………友達少ないんだ、 さん」

……
痛いところをつくよね、この娘。しかもニヤけてるからわざとだ。
ん〜、よし。ちょっとお返ししてみようか。

「そうなんだ。だからポンズと友達になれて本当に良かったよ

「んなっ?!」

「はい、終わりまた僕の勝ちだね」

「あっ! そ、そんな……

なんか結構自身あったみたいだなぁ。でもこういうのって手加減難しいし。

「はぁ〜、もういいわ。 さんには勝てそうにない。それよりも さんがやってきた仕事の話とか聞きたいわ」

え?! 仕事の話?! ん〜どうしよう? 念の事に触れないで話せるのってあったかなぁ?

「そうだね〜、あんまり守秘義務とかに引っかかっちゃうのは話せないけど……あ! そういえば一度……

そうして僕はポンズに仕事を始めたばかりの時の話をしてあげた。その頃なら僕自身念を使ってる自覚がなかったからヘタな事言わないですむと思うし。


















んで、そんなこんなで結局試験が始まるまでずっとポンズと駄弁ってました。
周りからはちょっと白い目で見られてたけど、まぁ暇するよりはよっぽどマシだったし、いいや。
あ、でも不愉快な思いさせてたらごめんなさい、ポンズ。
暇つぶしに付き合ってくれてアリガトね。




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